歯科恐怖症外来

院長よりのメッセージ

歯科恐怖症は、軽度なら勇気だけで克服できるかもしれませんが、大きなトラウマを抱えている場合は、それだけで改善していくのは不可能です。

 歯科恐怖症外来では、歯医者が怖いという方に対して、当院独自のプログラムを提供し、成果を上げています。当院では実際、9割以上の方が、歯科恐怖症を克服 しております。

初診の予約の際に「歯科恐怖症外来希望」とお伝えください。 まずはカウンセリング(初回無料)でじっくりと話を伺い、どのように診療を進めていくのかご説明させていただきます。

歯科恐怖症外来とは

歯医者が怖くてどうしても行けないという方は、もしかして歯科恐怖症ではありませんか?虫歯があって歯が痛い、歯茎の様子がおかしい、 歯医者に行くべきだとわかっていても、恐怖が先に立ち、どうしても行くことができない。そんな方々のために、当院は歯科恐怖症外来を設けております。 過去に体験した歯医者での痛みの記憶や恐怖心から、白衣、消毒のにおい、ドリルの音などが引き金になり、吐き気や嘔吐、血圧の上昇・低下、失禁、湿疹、 震え、けいれん、冷や汗、脂汗、過呼吸など、様々な症状が体に現れます。怖くて歯医者に行けないため、ひどい痛みを感じるようになっても通院せず 我慢してしまいます。そうすると、虫歯や歯周病が進行し歯がボロボロになる、口臭や膿が出る、歯が抜け落ちるなど、お口の中がボロボロになってしまいます。

歯科恐怖症を克服するために

軽度なら勇気だけで克服できるかもしれませんが、大きなトラウマを抱えている場合は、それだけで改善していくのは不可能です。 当院では、独自の歯科恐怖症克服プログラムを実施しておりますので、初診の予約の際に「歯科恐怖症外来希望」とお伝えください。 まずはカウンセリング(初回無料)でじっくりと話を伺い、どのように診療を進めていくのかご説明させていただきます。 いきなり治療を始めることはいたしません。お話をするだけで終わることもあります。できることから少しずつ始めることが大切です。 実際に、当院でカウンセリングをした方の9割以上が、通常の歯科治療を受ける事ができるようになっています。 歯科治療に対する恐怖心を克服したいとお考えの方は、是非歯科恐怖症外来を受診なさってください。

それでも怖い、そんな場合は・・・
静脈内鎮静法を、ご検討ください。

歯科恐怖症の「恐怖」はほぼ全てが「痛み」に対する恐怖

歯科恐怖症の「恐怖」は、実は、ほぼ全てが「痛み」に対する恐怖なのです。

「歯医者は怖い」=「歯医者は痛い」

ということです。

逆に言うと、

「痛くなければ怖くない」

ということになります。 しかし、それが簡単なことではないのは誰もが知っていることでもありますが、 「痛くない」を実現できれば、歯科恐怖症の患者様は症状が改善しますし、子どもたちも痛い治療を経験せずに成長できれば、将来「歯医者が怖い」ということにはならなくて済みます 

当院を訪れる患者様にはぜひともそうなっていただきたいので、診療においてはさまざまな工夫をしています。

「痛み」に対する当院の取り組み

浸潤麻酔(浸潤麻酔)

当院が実施している歯科恐怖症患者への取り組みのなかのひとつ、「浸潤麻酔(しんじゅんますい)」についてです。

まずはじめに、

「歯医者さんに麻酔が効きづらい体質と言われました」

と患者様から聞くことがありますが、それは一体どんな体質なんでしょう?

私は麻酔科にいましたので、麻酔について熟知していますが、麻酔がまったく効かないということはありませんので、考えられることは「麻酔が効きづらい部位だった」もしくは「麻酔が効きづらい状況だった」といったことが考えられます。

そういう患者様のレントゲンを見てみると、ほぼ全員下顎大臼歯が抜髄(歯の神経を取った)されているか、大きな修復物(銀歯など)が入っています。

強い炎症が起きている場合は仕方がないと思いますが、麻酔が奏功しないのを患者様のせいにするのは、歯科医師としていかがなものかと思います。

「私は麻酔が効かないから、歯科の処置は全部痛いんだ」

と思われてしまうと、恐怖症の克服はできません。

私もあらゆる症例全てで完全に麻酔を奏功させるということはできませんが、その原因は自分の手技の練度不足と考えます。

なので、当院では、「体質」のせいではなく、麻酔が奏功しづらい部位があることをしっかりと伝えたうえで、

「頑張って効かせるから痛みを我慢しないでください」

とご説明させて頂いております。
そのため、患者様は安心して身を任せてくれます。そして、麻酔がしっかり奏功すれば、処置は痛くありません。

痛くない処置を繰り返せば、患者様から恐怖感がどんどんなくなっていきます。

また、診療中に発生する偶発症のほとんどが、痛みなどのストレスが原因ですので、思わぬ事故を防止することへもつながります。

「そもそも麻酔が痛いから怖いんです」

という話もよく聞きます。

たしかに、何も考えずに歯肉へ刺入して薬液を入れると痛くなります。私はそれがトラウマで、人に麻酔されるのが嫌いです。だからこそ、患者様にはそんな体験してほしくないと思っています。

多くの臨床経験を積んでいくなかで、浸潤麻酔に関していろいろ試行錯誤した結果、「基本的な手技が一番痛くない」という結論に達しました。痛みのない浸潤麻酔の方法は、手順をしっかりと踏めば意外と単純なものなのです。

当院で行っている浸潤麻酔は以下のような手順です。

[1] 目的の部位にもっとも近い齦頬移行部を乾燥させる
[2] 表面麻酔薬をロールワッテなどで塗り込む
[3] そのまま2分程度保持する
[4] デンタルミラーなどで頬粘膜を引っ張り、できるだけ緊張させる
[5] 浸麻の針を、なるべく粘膜と平行になるよう刺入する
[6] 薬液をゆっくり注入する
[7] 必要に応じて、麻酔奏功部位へ追加で刺入、薬液注入していく
[8] 5~10分待つ

それぞれもっと詳しく説明します。

[1] 最初の刺入部位は必ず齦頬移行部です。表面麻酔薬は唾液があると粘膜に浸透しませんので、エアブローでしっかりと乾燥させます。

[2] 私はロールワッテで塗り込みます。10ストロークほど擦り付けるようなイメージで塗ります。

[3] 唾液が流れ込んでくると表面麻酔薬が流されてしまうので、ロールワッテをそのまま保持します。表面麻酔は平均1分で奏功しますが、1分では効いてない場合もありますので2分待ちます。

[4] ロールワッテを撤去し、頬粘膜を引っ張ります。この時、粘膜面が乾燥状態でシワシワになっていることを確認します。浸麻針刺入時に粘膜を緊張させていないと刺入角度がついてしまいますので、強めに引っ張ります。

[5] 浸麻針は33Gを使用します。針のカット面を上に向け、粘膜面を持ち上げるようなイメージで浅く刺入します。カット面が隠れたら、薬液を注入します。ちなみに薬液は温めても疼痛軽減効果はあまりみられないため、室温程度です。

[6] 薬液の注入速度はカートリッジ1/2(0.9ml)を1分間かけて注入するのが良いとされていますが、この速度だと痛みを感じる場合が多々あります。私の場合は、最初の1/5(0.3~0.4ml)を1分間かけて注入します。その後、刺入部位を変えずに少しずつ速度を上げていき、1/2量をトータル2分間で注入します。

[7] 処置によって奏功させなければならない範囲が違いますので、必要に応じて追加注入していきます。ただし、必ず麻酔奏功部位にのみ刺入するよう気を付けます。エピネフリン添加の局所麻酔薬であれば、奏功部位が貧血状態になりますので、歯肉が白く変色した部位に刺入・注入していきます。時間はかかりますが、これを繰り返せば口蓋側・舌側への浸潤麻酔も無痛で行うことができます。

[8] 麻酔奏功までの時間は1分20秒以上とされていますが、部位や皮質骨の厚みなどにより延長することのほうが多いので、前歯・小臼歯は5分以上、大臼歯・智歯は10分以上待つようにしています。

実際はもう少し細かくやっていることがあるのですが、
このやり方であれば、小児でも気づかれないうちに麻酔をすることができます。

痛くなければ、子どもたちも頑張って口を開けてくれます。

痛くなければ、治療が怖いと思っている人も頑張れます。

少しでも「歯医者が怖い」と思う患者さんがいなくなればと切に願います。

参考文献
1.仲西修、山室宰、岩本将嗣、川原博、今村佳樹、西正勝:局所麻酔注射における注射液温度と注入時疼痛、日本歯科麻酔学会誌 1995;23(3):484-489.
2.笹尾真美.よりよい歯科用局所麻酔薬をめざして―浸潤麻酔効果の検討―.日本歯科麻酔学会誌 2006;34(2):126-134.
3.斎藤毅、塩野真.保存治療における注射部位とオーラ注の使用について.Ora Dental Topics No.1,JUNE, 1998.